施主のK様ご夫妻は数年にわたり鎌倉周辺での土地探しをされて、最終的に北鎌倉のこのお土地に巡り合われました。
敷地は北側に建長寺や円覚寺の奥の山並みを一望できる、とても閑静で眺めの良い場所です。そして敷地の北側から西側に沿って湾曲する道路は自動車の通行がほとんどなく(細くて入れない)、北鎌倉の駅までめちゃくちゃ素敵な住宅街を縫って細い道路が続きます。これぞ北鎌倉って感じそのもです。 いや本当に素敵な街並みなんです。
K邸は住宅といってもちょっと、いや、かなり変則的な構成です。床面積の半分以上を使って、奥様のご趣味の絵画のためのアトリエ兼ギャラリーと仕事柄書籍を膨大に所有する必要のあるご主人様の書斎と防音機能のついたオーディオルーム、そして小さなタイル貼りの中庭を囲むようなサンルームといった、普通の住宅にはあまりない機能の空間群が並びます。そして寝室はミニマルサイズ、リビングダイニングも室面積としてはかなり小ぶりな構成です。一方キッチンは広め。また、庭作りにもかなりのこだわりをお持ちで、先述の小さな中庭が建物に食い込む形で設けられ、そこに楡(ニレ)の木を植える予定です。リビングダイニングは2階にあり小ぶりながら、北側に広がる鎌倉の山並みを一望できる広い屋根付きのバルコニーと連続しています。
K邸のもう一つの大きな特徴は、スキップフロアになっていることです。道路から法面(斜面)があり、約2m上がったところに宅盤があるので、来客も見込まれるアトリエ兼ギャラリーを道路レベルに近づけるために建物の北半分を半地下状にしています。
そしてこのスキップ構成にはもう一つ理由があります。それはこの地区が埋蔵文化財包蔵地に指定されており、実際に宅地の下には貝塚を中心とする縄文時代から延々と近世まで続く遺跡が埋まっていることが事前の試掘調査で判明しているので、この斜面に沿って斜めに埋まっている遺跡を傷つけないように建物も斜面に沿って斜めにスキップアップしているということなのです。
そのほかにも、たとえば収納はできる限り高さ1m以内に設けること、景色を切り取るピクチャウィンドウが点在することなど、なかなかユニークなご要望がたくさんあります。建物全体の雰囲気は、ちょっと昭和レトロな雰囲気を感じつつも、既存のスタイルにはまったものでなく、オリジナリティの高い、普通でないデザインという、これまた難しいリクエストも頂いています。
11月2日に地鎮祭を行い、いよいよこれから着工にかかるところですが、まだまだこれからもK様ご夫妻と相談を重ね、設計段階から行っている、ギャラリー見学巡り(すっごく勉強になるんです・・)なども継続しながら、オリジナルな空間を見つけ出し、創り出すという、コミュニケイティブかつクリエイティブな作業を重ねてゆく必要があります。
K様、今後ともよろしくお願いします。
(おまけ)
敷地の東隣に、雰囲気のある瓦屋根の平屋建ての古民家が建っているのですが、ここをリフォームして、つい最近、おしゃれなレストランが開店しました。地鎮祭当日に、ご挨拶をかねてK様ご夫妻と早速昼食に行ってみました。食通のK様ご夫妻をして、「おいしい!、味にちゃんと主張がある」とのことです。もちろん私は「とってもおいしい」と同感です。そして、オーナーさんは建築家でもあるそうで、内部は鎌倉らしい古民家の雰囲気をそのまま活かしながらも、すっごくおしゃれな雰囲気にリフォーム、いやこういうのはリノベーションっていうのですのね、・・されていました。
いやいや、食事も建物も素敵なお店でした。ご自宅の隣がこんな素敵なレストランだなんて、いいですね。





















隣の古民家レストランの玄関
